ソラノテガミ

迷い込んできた訪問者達

裏路地に、一人の少年が佇んでいた。
十代半ばか後半の、まだ子供の域にある、少年。
背丈は標準と同じくらいで、体格は細身ではあるがひ弱であるわけでもなかった。
全体的に言えば、ごく相応な見目をしていると言えるであろう。
ただその癖の強い髪と、何も映さない瞳は、歳不相応であるように見えた。
名を、浅月香介という。

「……っち、あっさり死にやがった」
浅月の口から、息がかすれる音が漏れた。
いや、言葉と形成していたようにもとれたが、ここに浅月の言葉を理解できる者はなかった。

人影なら、在った。
浅月のすぐ側、足下に。
大体三十ほどの男で、その全身は赤黒く染まっていた。
男が、力のなくなった体のバランスを崩し、路地へ倒れた。
その時下に溜まっていた血液が跳ね、浅月のズボンの裾を赤く染めた。

浅月の手が、力無くぶらりと揺れる。
そこには、男と同色に染まった物が握られていた。
――銀色の煌びやかな光を放つ、ナイフ。

浅月は、人を刺した。
いや、殺した。
たった今、ここで、いつものことながら。

殺しなら、とうに慣れている。
今では快楽の入手元程度にしか、思っていない。
浅月の、快楽すらも燃え尽きた瞳は、ただ、動かない物を、見下ろしていた。

風が、吹く。
同時に、血の臭いが鼻についた。

「…………!!」

浅月は、ようやく認識できた。
自分が、人を殺したと。

自分は人を殺した。
自分は人を殺した。
自分は人を殺した。

浅月は、自分の口元を押さえ、嗚咽する。

血の臭いが、気持ち悪かった。
人を刺した時の感触が、気持ち悪かった。
目の前にある血の溜まりが、気持ち悪かった。

何度やっても、慣れない感覚だった。
慣れたくもなかったが。
殺す時には、いつも平気なのに、殺し終わった後が嫌で仕方ない。

浅月は、口元を押さえたまま死体に背を向け、
行き場所を決めているかのようにきっぱりと歩き出した。

逃げたい。
運命から?
殺しから?
守るべき物から?
何にしろ、無理な願いだった。

なぜなら、浅月は既に逃げているからだ。
もう逃げ場など無いのだ。
救いなど、探すだけ無駄な物なのだ。

もう、天使の幻想すらも、舞い降りてきはしない。

だから、浅月は行き場所を決めた。

忌まれるべき存在の、無様な廃墟へ――。



いつもの風景、いつもの日常。
確かに彼は今、そんな日常の中にいた。
けれど、沸き上がる微かな違和感。
その正体は、当に分かっている。

いつも見かける、ツンツン頭の間抜け眼鏡。
そう、その人物を見かけていないのだ。
毎日少年の通う近所のスーパーに、大体同じ時間に居合わせる人物。
名前など知りもしないが、ただいつもカップラーメンやら弁当やらを買っていくので、
少々気になっていた。
そいつを今日は見かけない、ただ、それだけのことだった。

裏路地に、がさがさとビニールのこすれる音が、歩くリズムに合わせて響く。
牛乳パックやその他に食材を敷き詰められたスーパーの袋は、
振り子のようにゆらゆらと揺れていた。

彼は今、夕ご飯の材料を買った帰りである。
とはいえ時刻は既に夕方、冷え込み始めた秋の空は、既に赤々と染まり始めている。
自然と少年の足取りは速まった。
気味の悪い廃ビルの近くに差し掛かったせいもある。
使われなくなったビルは、夜暴力団のアジトになっているとかで、
あまり近付きたい物ではない。

しかし、人影が見えた。
ビルの屋上に、人影が見えたのだ。
一瞬暴力団の一味かとぞっとするが、相手は一人きり。
まだ背も小さいし、どうやら違うらしい。
少年は少し気を落ち着かせると、再び屋上を見た。

改めてみると、危なっかしいと思った。
今にも飛び降りそうな危うさだ。
自分と対して変わらないだろう少年が柵に寄りかかるのを見て、少年は顔をしかめた。

近付いて、顔が見えるほどにまでなったとき、少年は驚く。
まさかのまさか、それは見知った人物だったのだ。
ツンツン頭の間抜け眼鏡。
名も知らぬ彼は、まさにいつも見かけるその人だった。

少年は走り出す。
食料を買いに来なかった彼。
屋上に佇む彼。
否が応でも、嫌な想像へと導くのだ。
ただ地元に住んでいるだけの、赤の他人であったが、
死体になったらさすがに居心地が悪い。
少年は舌打ちする。

少年の姿は、廃ビルの中へと消えた。



夕焼けが見える屋上で、浅月は一人蹲る。
近々取り壊されるであろう廃ビルの、屋上だった。

ここから見下ろす町は、赤い。
何もかもが赤く、浅月も、さっきまで生きていた、あの男も、赤い。
みんな、赤く染まる。
浅月と、男の赤は、浮きだって黒っぽく、鉄の臭いがするだろうが。

浅月は、自分の上着に付いた黒いシミを、きつく握りしめる。
渇いたシミは音を立てて割れ、少しだけ鉄臭い臭いを発した。

そう……彼は、人を殺した。
ついさっき、しかも初めてじゃない。
だから、現在彼はどうにも慣れない殺人の酔いを覚ますため、
昔馴染みのこのビルに来ていた。
ずっと前から廃ビルで、放置されていた、このビルに。

浅月には両親がないから、嫌なことがあっても慰めてくれる人はいない。
だからつい、小学三年の頃、泣くじゃくりながら見つけた、このビルに来る。

「あー、気持ち悪い……」
昔のことを考えていたら、余計嫌な気分になってきた。
こみ上げてきた吐き気を、無理矢理押し戻し、
浅月は空を見上げてごろりと寝転がる。
同時に、秋になりかけの時期に吹く、生暖かい風は、
浅月を微かに揺らしていった。

……ああ、気持ち悪い。

熱くもなく、冷たくもなく、生暖かい、風。
何事もなく通り過ぎず、大した影響も与えず、過ぎてゆく風。

白黒付けてくれよ、と思う、全く。
中途半端で、居心地が悪い世界。
浅月に、この世界での居場所はない。
今浅月がいる、廃ビルも――。
捨てられた、世界から。
いらない、と。
それならまだ、廃ビルの方がましかもしれない。
廃ビルは、いらなくなったから見捨てられた。

浅月は。
ブレード・チルドレンは。

――在ってはいけないから、排除される……。

「くそっ……亮子」

ふと呟いたのは、幼馴染みの名だった。

自分はいらない物だけど、在ってはいけない物だけど。
守りたい人がいた。
同じ、境遇にある者。
浅月はいらない者でも、せめていつも隣にいた亮子だけは、守ってやりたかった。

だけど、守れず。

彼は結局彼女から離れた。
何だか、浅月は、逃げてしまったような気がする。
何処に行ったって、浅月達にとっては何処も闇だけど、変わらないけれど。
気分的に、胸くそ悪い感じがした。

「だーっっっ!
気分悪ぃ!!」

イヤな物を吐き出そうと、叫んでみるが、無駄だった。
音は虚しく虚空へ消える。

浅月は気分を直そうと、錆びて歪んだフェンス越しに、町を見下ろした。
赤く、染まった町。

浅月は、太陽の色に支配される、この時間が好きだ。
町は本来の色を失い、太陽の赤い光に飲まれる。
圧倒的な、支配。
どうせ希望を摘むなら、これくらい徹底的に摘んでしまって欲しいと思う。
叶いもしない希望を、眼前にちらつかされても、吐き気がしてくるだけだ。

……くだらねぇ。

最初から望みなどない方が、良い。
浅月は吐き捨てるように思った。
ああ、そうさ。
俺達、ブレード・チルドレンは、どうせ救われないんだ。
呪われた、哀れぶってる子供達なんざ。

「死んじまえ……」

「おーおー、随分と物騒なことを言うな」

「?!」

背後から聞こえた声に、浅月は反射的に振り返った。

冗談じゃない。
音がなかったばかりか、気配まで感じなかった。
浅月はこれでも、普段から危ない橋を渡っている。
人も……何度も殺している。
だから、誉められた事じゃないのは、判ってるが。
これでも、人より感覚が研ぎ澄まされている自信はあった。
なのに、何も察知できなかったなんて、浅月には信じられなかった。

警戒しつつよくよく相手を見たら、そいつは……意外なことに、
浅月と同い年かそれ以下の、子供だった。
少年は、飄々と口を開いた。

「死んでしまえという言葉が出てくるとは、相当ストレスが堪っているんだな。
カルシウムが足りないんじゃないのか?
栄養バランスを配慮した食事を取らないといけないぞ」

淡々と、どうでも良い世間話が滑り出る。
余計なお世話だ、そう言おうとして、止まってしまった。
自分の最近の食事が思い出される。

……そう言えば、ここの所、カップラーメンを食った覚えしかないな……。

「う~ん、足りてないかもな」

「だろ?」

少年は、浅月の横へ来て、相づちを打った。
って、何話題に流されてんだよ俺!
浅月はふと正気に戻って、叫んだ。
「じゃなく!
どうしてお前はここにいるんだ!?」
得体の知れない奴に見せた失態に腹が立ち、浅月の声は荒っぽかった。

見たところ、相手は格闘のド素人。
だから浅月が少年の接近に気が付けなかったのは、単なる彼の油断。
だからよく、詰めが甘いって言われんのかな。
少し反省して、浅月は額を押さえた。

しかしそれ以上に。
この少年のペースにあっさり巻き込まれてる、自分がイヤだった。

そんな、浅月の心の葛藤など知るはずもなく、少年は答える。
「あんたこそ、こんな廃ビルの上で何をしている?」

……可愛くないガキだ。

非常に可愛くない。
顔は、かなり可愛い部類にはいるけど。

つり目がちな、大きな目。
くっきりとした二重に、黒い瞳孔。
ふわふわと自由にはねる、さらさらな髪。
少し長めに切られた、もみあげ(この箇所は謎だ)。
女共が騒ぎそうなほどに整った、美少年だ。

だけどその目つきは虚ろで、ひねくれた感じがある。
丁度、生暖かい、風のように――。

「……変なガキ」

ポツリと、思ったことを口に出してみる。

そのままにしておくと、
「あんたほどじゃない」とか
「あんたとそれ程歳は離れていないと思うが?」
とかの突っ込みが来そうだったので、浅月は先に言葉を続けた。

「俺は、浅月香介。
お前は?」

案の定、ガキは紡ごうとした言葉を遮られ、一瞬の間を空ける。
しかも、浅月から名乗っているから、断ることもし辛いようだ。

ここでやっと少年の眉が、形よく歪む。
何だか、嬉しい。
人の困る顔を見て、快感を感じるのは、やばいことだろうか。
いや、最初からやばかったんだから、いまさら……か。
浅月は苦笑した。

また、風が吹いた。
彼ををあざ笑うかのように。
少年も、同じことを思ったのか、顔をしかめる。

想いを誤魔化すかのようなタイミングで、少年は口を開く。

「俺は……知也。
陣内知也」

浅月は、「知也か」とオウム返しに呟いた。
ふと、知也が話題を戻してきた。

「所で、浅月はどうしてこんな所にいるんだ?
俺は、買い物に行く途中で、叫び声が聞こえたから、寄ってみたんだが……」

知也は少し嘘を付いた。
叫び声を聞いたのは、ビルに入ってからだ。
同じスーパーを使っていることを言うのが、少しためらわれた。
覚えられていないことを危惧したのか、
それとも赤の他人を覚えていることを隠しておきたかったのか。

そうとも知らず、浅月は、
……叫びって、もしかすると俺の独り言か?
よくあるんだよな、興奮すると周りが見えなくなること。
まさか、思わぬ所で人に会うとはな……。
と、頭を抱えていた。

どうするか?
本当のこと話すわけにもいかねぇだろ?
しばし浅月は戸惑う。
「……どうした?」
しばらく考え込み、黙る浅月に、知也が尋ねてきた。

とりあえず、何か言わないと。
焦って、浅月は、こうなったらある程度本当のことを出して、
誤魔化すしかないという結論を出した。

ふぅ、と一息、ため息をつく。
それから浅月は言いたくもない過去を、大ざっぱに端折りまくって並べる。

「いや、俺……両親亡くしちまってさ、行く宛てなくて……。
昔からよく来たこの場所に、来たくなったんだ……」

後は、知也が良識人であることを祈る。
頼むから、これ以上聞かないでくれぇ、俺はあまり誤魔化しが得意じゃないんだぁ……。
浅月は心の中で嘆いていた。

ちょっとした沈黙が流れ、浅月は、ちらりと知也の顔を伺った。
少し後悔するような、顔をしてた。
浅月の言葉を信じたからだろう、聞かない方が良かったのかもしれない、
といった、微妙な顔つきだ。

珍しく、浅月の良心が少し痛んだ。
人の歪んだ顔を見るのは好きだけど。
人の不幸は楽しいけれど。
何故だか、知也の悲しく歪んだ顔は、浅月の心にちくちく浮かぶ。
何なんだ? 一体どうして、こんな気持ちになる?
多分、亮子を泣かせた時と同じ気持ち。
後悔して、もうそんな顔は見たくないと思って……。

「なぁ、浅月」

浅月の、考え込む顔を見てどう思ったのだろう、
知也はまごついた口調で声を掛けてきた。
顔を上げると、悲しそうな目をした知也と視線が合う。
知也は視線をとっさに逸らし、続けた。

「良ければ……家、来いよ」

「……え?」

しばらく、浅月の脳味噌休業状態。
何だって?
今、知也はその場の感情に任せて、何て言った?
聞き返したいが、それも怖かった。

「行く宛がないんだったら、家へ来い。
俺ん家は兄と二人暮らししてるから、
一人くらい増えてもどうって事はないさ。
妙なこと訊いちまったし」

ああ、罪悪感か。
知也の悲しみは。
浅月は納得した。
だけどきっとそれだけじゃない。
兄と二人暮らしというのには、それ相応の事情があるのだろうから。
今、例え多少の罪悪感があったとはいえ、見知らぬ男を家へ連れる気になったのは、
その事情に関係するだろう。
何となくそう感じた。

浅月は、願ってもない申し出に、しばらく黙り込む。
浅月は一人暮らしだし、中学さえ卒業してないから、働き口もない。
ブレード・チルドレンとしてウォッチャーから支給金を貰ってはいるが、
ほとんどアパートの家賃や電気代に飛ぶ。
残っても遊びに使ってしまうので、手元には何も残らないも同然だった。
ちなみに、食費もなかった。
これは生きていく上で、とても痛い。
だから、知也の申し出は、まさに願ったりだ。

それでも悩む理由は、浅月らしくもなく、騙した罪悪感だったりする……。

沈み込む浅月を見て、知也が自嘲するように口を開いた。

「ん、別に、他人だから信用しなくても良いよ」

「い、いや、そうじゃないって!」

いきなり自分を卑下し出す知也に、浅月は慌てて否定する。
本当、知也が言ってくれたことには、感謝する。
だから、違うんだ。

「俺、さ。
はっきり言って、お前にとって俺が、それこそ他人なんだぜ?
俺こそ信用しちゃいけ無くないか?」

言い繕う浅月の言葉に、知也は「そういえばな……」とぼやきつつ腕を組む。
って、考え無しに言ったのか?
以外に計画性のない奴だな~……。
浅月は呆れて、思わず顔がにやけた。

知也は、しばらく考え込むかのように、目を閉じる。
長いまつげが夕日に照らされ、くっきりと瞼に影を落とす。

綺麗だな……。

赤と黒のコントラスト。
夕日の色と、知也に掛かる影の色。
儚げで、繊細で、本当に綺麗だと思った。
浅月の服に染み付く血と、夕日のコントラストとは、ワケが違う。
いや、そうじゃない。
浅月が知也に惹かれたのは、「同じ」だからだ。
悲しいんだ、孤独なんだ。
……置いてかれたんだ。
運命に乗せられて、運には見放されて、ふらふらと廃ビルの屋上へやって来たんだ。

ふと、亮子の顔が浮かぶ。
浅月は、突然あいつの前からいなくなった。
あいつは今頃、泣いてるだろうか。
もう、そんな歳でもないだろうが。
少なくとも浅月には、知也が泣いているように見えた。

守りたい。
誰一人として守れないけれど、無駄だと思うけど。
守りたいんだ。
せめて近くにいる奴くらいは。

浅月は、知也に何か声を掛けようとしたが、止めた。
何やってんだか、俺……。
混乱した頭を景気よくぶんぶん振った。

何か、ここで家行きを承諾しちゃいけないような気がするけど、
是非! と言いたい気分だった。

どうしようか、悩む浅月の向こう、知也が顔を上げた。

「俺、歳の近い兄貴が欲しかったな」

風が、吹いた。
冷たい、重く水分を含んだ、泣いているような風。
知也の髪が、風になびく。
口元は、笑みを浮かべていて、目元だけで泣いているようにも見えた。

泣かせたくない。
泣かないでくれ。
ただ、守りたいだけなんだ……。

守りたい、守りたい、守れない。
だからせめて。
側に、いたい。

「良いぜ。
知也が、良いって言うんならな」

浅月は、半ば反射的に口を開いていた。
結局最後に勝ったのは、利害による判断ではなく、本能的な思いだった。

これが、俺なんだけど。
浅月は自嘲した。

「本当?」

知也が、嬉しそうに問い返してくる。
急に、花が咲いたみたいに。

「本当だ」

思わず浅月は嬉しくなって、顔が弛む。
ここに亮子がいたら、きっと「だらしがないな」とか言うんだろう。
人の苦痛に快楽を覚える浅月が、人の喜びに嬉しくなるだなんて、
妙なことのようだ。
だけど、嬉しかった。
知也に求められて、知也が笑って。

自分のために生きるには浅月は自虐的で、他人のためにしか生きてこれなかった。
でも、他人のためにはならなくて。

笑顔が、妙に浅月の胸に染みた。

知也が、とてとてと、浅月に駆け寄ってきて腕を掴んだ。

「じゃあ、行こう!」

その笑顔は、儚げで。
その分美しくて、本当に輝いていて。
不安だったんだろうか、知也は。
何が、って言われると思いつかないが、浅月にはそんな感じがした。

浅月は、知也に引かれるまま、歩き出して。

「ああ」

久しぶりの心からの笑顔をかべ、頷いた。

……なあ、亮子。
俺は、お前を守りきることは出来なかったけど。
側にいてやることは、無理だったけど。
今度は、守りきることが、出来ると思うか……?

新しく見つけた、守りたい友達を――。

浅月は、数年間一人で潜った廃ビルの屋上のドアを、初めて二人で通った。
腕は、知也によってしっかりと捕まれていて。
えらく細い腕だったけど、暖かい。

通り過ぎた後ろ手、静かに廃ビルのドアを閉じた。
いつもより軽々しくて、少し驚いたが、不思議という感覚はなかった。
必然であるように思えた。

二人で押せば、思い扉も容易に動く。
浅月は、知也となら、重い人生の扉も開いていけるような気がした。


End.   

香介君は身寄りがないのにどうやって生活していたんだろう……。
ということで、私的中学生編。
香介君が中3の頃をイメージ。
陣内知也はオリジナルキャラで、最初彼の役は歩君にする予定だったんですが、
設定があり得ないのでやめました。
だから知也の性格は歩む君とかぶっているかも。
ちなみに、この話続きません。
続きは考えてあるけど、更新できるかどうか……(汗)。
ついでに、舞い降りてきた天使か悪魔の続編にあたる話の予定でした。