「Happy Birthday」



誕生日。
自分がここに生きてる証。
その日を祝ってもらうと、自分は生まれてきたコトを望まれているみたいで、温かい。

幼い頃、祝ってくれたのは母だった。
十四年間、母一人だけ。
むしろ、母以外オレの誕生日を知らなかった。
誰にも教えはしなかったし、誰も知ろうとはしなかった。

十五の時は、同じ勤め先の、ザックスが祝ってくれた。
翌年はザックスが仕事仲間を集め、生まれて初めて盛大に祝ってもらった。

十七から二十一までのその日は、一人だった。
いや、一人ですらなかった。
ザックスが死んだ、母が死んだあの時から、オレはオレであることを放棄したからだ。

今までの誕生日が蘇る。
いつが一番幸せだったろう?
肉親に、祝って貰っていた頃だろうか。
一番盛大に祝って貰った時期だろうか。
オレは確信が持てる。
幸せなのは、今だって。

二十二のその日、側には仲間がいた。
従うだけの運命に逆らった、馬鹿な仲間達だ。

この先――オレは、どんな人生を歩むのだろう。
恐らく、長き時を生きる程、生まれた日を疎ましく思うのだろう。
なぜならそれは、――いや、そう例えるには、まだ希望が…光がありすぎる。
まだ、見えない時に向かってあてもなく指を折る気はない。
永き時間死ねない体に、オレの精神(ココロ)が追いつかなくなった時。
オレは闇という名の光への道を辿ろう。
それまでは――。

それまでは、誕生日は他人に祝ってもらいたい。だから、オレは。
「クラウド〜、誕生日おめでと!」
祝福してくれる愛しき仲間に。
「ああ」
自分でも不器用だと思う笑顔を、返した――。



FIN.







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