「Dear 〜君へ〜」



バカな男
口を開けば気障な言葉ばっかりで
真剣な場面でもおどけて見せて
女を見掛ければその綺麗な顔に完璧なスマイルを浮かべて愛なんて囁く
―心の奥底に深い闇を隠して

私達は知っているわ

貴方はいつもポーカーフェイスで誤魔化すのね
根は真面目なくせに悪ぶって
傷付きやすいくせに強がって

泣きたいくせに笑って
辛いくせに平気ぶって
寂しいくせに独りで背負い込んで

そう、全部裏返し。

辛い想いも、悲しい経験も沢山受けてきて
唯一の肉親から憎まれさげすまれ
自らの存在さえ否定されて生きてきた

貴方の嘘は、それらから傷付いた心を守る盾

そしていつしかそれが当たり前になってしまったのね

寂しい時は寂しいと言い
泣きたい時は誰かにすがって泣けば良い

そんな当然の事が
貴方にはできないのね
貴方は闇を抱えたまま前を向く

その軽薄な仕草で全てを覆い隠して

嗚呼、なんて
バカな男――



END.



ドラクエ[SS第三段です。
ジェシカ→ククール的シチュエーションがイメージ。
(弥栄に届けられた文が発掘されましたので掲載します)


2005年 莢香




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