「決別」



ずっと 欲しかった。
あの時1度だけくれたあの優しくて温かい瞳と声
もう一度手にいれたくてずっと耐えてきた
いつか受け入れてくれる
また微笑んでくれると

――きっともう叶わない

ブーメランが弧を描く
斧が切り裂く
魔力の炎が燃え盛る

あいつの体がぐらついた
次で 終わる

弓を構え
矢を定め
弦を引く
狙いは

目の前に対峙する兄

視線がぶつかる
真正面から
絶望と怒りと悲しみを沢山知ってきたグリーンの瞳でこちらを見据える
今あいつの視線の先にいるのは
今正に自身に矢を向ける 虫ケラのように扱ってきた弟

ずっと求めてきた
あんたに正面から向き合って貰える日を
まさか
こんな形で叶うなんて――

初めて会った日の事が蘇る
たった一瞬の幸福
今でも糧にするあの安らぎ

それをくれた愛しく哀れな人を
自ら奪おうとしている

けれど これしか方法が無いんだ



「―――兄貴」




視界が濡れる
弦がキリキリ鳴る
あいつは動かない

この一撃で 終わる





「―――ごめん――」





矢を握った左手を




離した






END.



*あとがき*
ドラクエ[SS第二段です。
やはりククールメインですね。
まぁこんな時は「好きなものは好きだからしょうがない!」
と叫んでおくことにして。

「決別」ですが、コレは時間軸でいうと「聖地」の直後のお話になります。
まさに対兄貴戦真っ只中。
ククールにとっての最大の山場です。
憎まれても存在を否定されても腹違いのお兄ちゃんを憎めなかったクク。
初対面時の数分だけ受けた優しさに10年も固執してたクク。
切ない。DQ史上ここまで切ないキャラはいません。
テリーやピサロ様も相当切なかったですが。
(あ、全員銀髪キャラだ・・・)

そういう彼の心境がちょっとでも伝われば良いんですが、やっぱ無理だったかな・・・。

ちなみにこのSSの背景には莢香がこの戦闘プレイ中、ククールが止めと刺しちゃった事があります。
忘れません。あの最後の『はやぶさ切り』。
SSでは弓使ってますけどね。

本編より長くなりそうなのでこの辺で退却。
ここまで読んでくださった方に感謝。


2005年 莢香




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