「聖地」



「手加減するつもりはない。そこまで甘くないけど…」

――あいつ 死ぬのかな?

さらりと彼は言った。
思わず振り返って見た彼は、うつ向いて苦く微笑んでいた。
その表情が酷く辛そうで、悲しそうで。
――痛かった。

あの魔の杖がマルチェロの手に渡った今、彼と闘う事になるのは必至の事実。
そうしなければ、カラダを支配した杖の意思がまた新たな犠牲者を生んでしまうから。
それはドルマゲス、レオパルド、そしてゼシカと闘ってきてはっきりと判っていた事。

ゼシカは殺さずに助ける事が出来た。
けど、ドルマゲスとレオパルドはそうはできなかった
(最も、ドルマゲスに関してはそんなつもりはなかったけれど)。

だったら今回はどうなるんだろう。

これから起こるであろう戦闘で1番辛いのはククールだ。
今まで酷い言葉を浴びせられて、傷つけられても、ずっと気に掛けていた人だから。
この世でたった一人の肉親だから。
そんな兄を、自らの手で殺すかも知れない。
その恐怖が今ククールを苦しめていた。

ヤンガスやゼシカもそれが判っていて、なんとも言えない顔をする。

――けれど。

僕達は行かなくちゃいけない。

これ以上悲しい犠牲者を出さないために。

「―死なせないよ」

きっぱりと、そう言いきる。
自分にも言い聞かせる為に。

ククールが顔を上げて僕を見た。
僕も彼を真っ直ぐに見つめた。

「死なせない。
 絶対に。
 ゼシカだってちゃんと救う事が出来たんだから。
 ――お兄さんだって絶対に救い出せる」

ククールの瞳が僅かに揺らめいた。
不安と恐怖が入り混じった色。
その瞳を、真正面から見つめる。

「大丈夫」と。

「止めよう。
 今度こそ。
 僕達なら、できる」

その言葉にゼシカとヤンガスが力強く頷く。

ククールはまたうつ向いた。

「――そ……だな。
 悪い、どうかしてた」

そして顔を上げ、前を見据える。

「――行こう」

その瞳にさっきまでの弱々しさは消え、強い決意がみなぎっていた。
僕はほっと胸を撫で下ろす。
そして共に前を見る。
そして、扉に手を掛ける。



僕達は静かに、闘いの祭壇へと続く扉を開いた。




FIN.
初・DQ8小説!! そして初の文章二次創作!!(>▽<)/
莢香が1番好きなイベントである聖地の闘いに向かう直前の様子を書いてみた次第。……が、携帯に打ち込んだ後にもの凄い情けなさが漂うのは何故ですか。語彙が足りない!!
文章の神よ召喚!!(無理)
何より心配なのはキャラを壊していないかです……。莢香の中での主人公像はこんな感じなんです。優しさを強さに変えられる人。一人称は僕でも俺でも良いけど今回は僕で。
1番最初のククの台詞は本編で実際に出てきます。「なかま」コマンドで是非確認を! その台詞があまりに切なくてもう妄想爆発。
戦闘後のイベントも素敵!! ああもうお前ら兄弟は世界の中心で愛を叫んでしまえ。(多くのサイトでこう呼ばれています) そしてククはマルを探し出して兄弟仲良く暮らすが良いさ!!(これが定番な展開) ……というワケで莢香はマルクク兄弟が大好きです(結局ココか)。

もう1つ記念。これが莢香史上初の完結作です(うわぁ…)。文が稚拙なのでこれから修行して出直します…。

ではでは。




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